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富士山麓の別荘地で蒸気機関車を走らせる

Nさん夫婦

■線路を敷くために平坦で広い土地を探しました

約10年かけて手作りしたNさんのライブスチーム

約10年かけて手作りしたNさんのライブスチーム

富士山の一合目、標高1,000m~1,200mに広がる富士ヶ峰高原別荘地・富士ドクタービレッジに、「別荘で機関車を走らせているオーナーさんがいる」という話を聞き、勇んでたずねました。その時は、ジオラマ?を作っているにちがいないと思い込んでいたのですが、現地を訪ねてびっくり!そこで見たのは、室内に置くジオラマではなく、レールの上を走るミニSL、専門的にはライブスチームと呼ばれる蒸気機関車だったのです。

オーナーは、別荘を建てて約10年を迎えるNさん夫妻。どういうきっかけで別荘を持とうと思ったのかを聞きますと、「25年目の結婚記念日を別荘で過ごそうと思って購入したんだ」とご主人。ですが、本当の理由は、どうも10年くらいかけて作った機関車を実際に走らせてみることだったらしいと、奥様が暴露してくれました。なるほど、見れば別荘を囲むように敷地の周囲にレールが敷かれています。母屋とは別に作業用のログハウスもあります。踏み切りや車両の向きを変える回転台まで備わっていて、ものすごく本格的です。

蒸気機関車は人を乗せて走るし、石炭を焚けば煙も出る本格的なもの/></td><td width=

蒸気機関車は人を乗せて走るし、
石炭を焚けば煙も出る本格的なもの

レールを敷くために、土地ができるだけ平坦で広いこと、これが別荘地探しの重要なポイントだったそうです。

線路を引きたくて、岐阜あたりから福島まで、あらゆる土地を探しました。条件は平らで広くて、予算内で買えること。この富士山の麓は最初気づかなかったけど、来て見たら近いし、条件にぴったりだったんです」。 それでも少し傾斜があったので平らにしたそうです。

■朝5時起きして、機関車のための作業に没頭しています

別荘を建てて以降、週末を利用して月に2回は来ているNさん夫妻。それは一日でも早く、線路を完成させたいからで、朝5時から起きて作業に取り組んだそうです。というのも線路を敷くためには、まず土壌改良が必要。冬場に凍結するとレールが浮き上がってしまうので、凍結しても歪まないように1m下までコンクリートを流し込む必要があったのです。

「コンクリート練りからはじめて、一日2mのペースで線路を敷きました。「1周させるのに、8年近くかかりましたが、2年前の夏、ついに完成したんです。その時は仲間を招いて、テープカットの開通式をしたんですよ」と子どものような笑顔で話される。ライブスチームを愛好する「JCFCの会」の仲間たちは、年に数回集まって、機関車を走らせるのを愉しみにしているのだそうです。

奥様は「汽車が一番だから、お手上げ」と言った感。でも、開通式のテープカットの花は奥様が手作りでプレゼントしたとのことです。「主人が作業に没頭していると、私は退屈でしょ。何かできるものはないかと考えて、織物をはじめたの」と奥様。1本1本糸を紡ぐ織物は、ひとつの作品ができあがるまでにとても時間がかかるから、ちょうどいいのだそう。最近では、フィンランドまで糸を買いに行かれたそうで、奥様の趣味も本格化しつつあるようです。

■庭から見える富士山、ウサギや鹿もやってきます

ウッドデッキにはテーブルを置いてお茶も飲めるスペース

蒸気機関車のお話で夢中になってしまいましたが、Nさんの別荘の庭からは富士山が見えます。私が訪ねたときは、お天気が曇りで、残念でしたが、葉っぱが落ちた冬には、木立の間から見えるのだそうです。

お邪魔したのは連休前でしたが、敷地のあちこちに可憐なフジザクラが花をつけ、うぐいすの生声がBGMで聞こえてきました。「線路を敷いていると、ウサギやリスがやってくるんだよ。この前なんかは気がづいたら鹿がいたので、ちょっとびっくりしましたけどね」とご主人。

散歩中に人に出会うと、みんな挨拶するそうで、家庭的な雰囲気も気に入っているそうです。

「中央自動車道を使えば2時間足らずだけど、機関車を積んで行ったり来たりは大変。空気もいいし水もおいしいし、ここに定住するのもいいね」と去年の春に話されていたのですが、その年の9月にはご主人は正式にリタイアされたそうです。リタイア後は、月のほぼ半分を富士山麓の別荘で過ごされているというNさん夫妻。私が訪ねてから1年経つのですが、その間に新しく鉄橋もできたそうです。毎日、時間を気にすることなく、自然の中で機関車の整備に没頭、念願の悠々自適を愉しまれています。